不法滞在は当然に法違反の状態ですから、摘発での身柄確保でも自ら出頭した場合でも退去強制手続が開始されます。この退去強制手続、その調査や審査の過程で間違いが有っては相当に不利益を与えてしまいますから、出入国在留管理局(入国管理局)側でも時間と人員を割いて慎重に進めます。まずはその手続の流れを簡単にご紹介します。
【 退去強制手続の流れ 】※在留特別許可を受けるまで
1. 違反調査
不法滞在、資格外活動違反、刑罰法令違反、その他の退去強制事由に該当する疑いに対し、入国警備官が違反事実を調査
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2. 違反審査
違反調査に誤りが無いかどうか、退去強制事由に該当するか、入国審査官が違反事実を審査
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3. 口頭審理
違反審査での認定内容の誤りを主張、または在留特別許可を求める場合に請求出来る、特別審理官による口頭審理で判定
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4. 異議の申出
口頭審理での判定内容の誤りを主張、または在留特別許可を求める場合に、主任審査官へ法務大臣による最終判断を申出
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5. 法務大臣の裁決
違反調査、違反審査、口頭審理の事件記録を精査し法務大臣が最終判断(退去強制処分、出国命令該当、在留特別許可)
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6. 在留特別許可
退去強制事由に該当するものの、特別な理由、事情を考慮された結果としての、法務大臣の裁決の特例
かなり簡易な説明となりますが、上記のようなステップとなります。一本道でゴール(在留特別許可)まで進んでいるかのように見えますが、法務大臣裁決の結果として在留特別許可が出るのは、本当にあくまでも例外です。本来は不法滞在の罪で退去強制処分となりますので、その点はきちんと理解しておく必要が有ります。軽く考えては駄目です。ちなみにここ最近の退去強制処分の件数は以下の通りです。
2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
退去強制令書の発布件数 | 9,348 | 7,329 | 6,425 | 5,821 | 6,589 | 7,241 |
(法務省公開統計より)
『在留特別許可(ザイリュウ-トクベツキョカ)』、『在特』とも呼ばれる黒を白に変える魔法のような処分。
本来ならばその法違反により国外退去(退去強制処分)となる所、日本での滞在を継続するだけの特別な事情(止むを得ない状況)を考慮して、特別にその後の正規在留を許可する処分の事です。通常の在留関係の手続とは異なり、在留特別許可を求めて申請する行為は存在しません。退去強制手続を進められた結果、最終処分として受けられる例外的で”特別”な判断です。
この在留特別許可、その手続の流れや判断基準は結構変遷しています。時期によっては出頭後1ヶ月程度で在特判断が出ていた、日本人と婚姻関係に有ればほとんどが大丈夫だったような時代も有りました。ですがここ最近は非常にシビアになっていると感じます。シビアと言うのか、本来の違反処分として妥当と言うのか、いずれにしても出頭する側にとっては厳しい状況に有ります。在留特別許可はやはり”特別”な場合にのみ下される処分なのだと痛感させられます。
*手続結果が出るまでは相当な期間を要しますので、当然ですが十分に「覚悟」する事が必要となります
当事務所では、まずは不法滞在状態の正確な状況把握に注力します。様々な視点から分析して個々の状況に見合う選択肢、可能なサポートをご提案致します。直ぐに帰国を目指す場合、何とか日本に留まりたい場合、制度の説明を含め正しく現状を理解してもらいながら、希望するゴールを一緒に目指します。日々積み重なる法違反状態への後悔、発覚するリスクに怯えて暮らす不安、早く何とかしましょう。当方へ連絡を頂いても通報はしません、まずは一度ご連絡下さい。